ニュースで「医療従事者のベースアップ実施」と聞いて期待していたのに、実際の給与明細を見たら数百円〜数千円しか変わらず、「これじゃ物価高に全然追いつかない…」とがっかりした経験はありませんか。
そのまま病院任せにして放置すれば、増税と社会保険料の負担に恩恵を削り取られ、いつまでも「割に合わない」と感じる働き方を続けることになりかねません。
この記事では、2026年の賃上げ制度と、額面が増えても「手取りの増加幅が鈍くなるカラクリ」を整理します。
医療現場で働く現役放射線技師であり、FP2級を持つ筆者が、実際に自分の給与明細で起きたことも交えながら、手取りを増やすために取り組んでいる3つの対策を紹介します。
2026年(令和8年)の賃上げ「ベースアップ評価料」の仕組みと限界
令和8年度診療報酬改定(本体プラス3.09%)による「ベースアップ評価料」で医療従事者の賃上げが推進されていますが、これは病院が算定要件を満たした上で配分される仕組みです。
職種(コメディカル等)や経営判断によって配分額に差が出やすいため、すべての医療従事者がニュース通りの恩恵を受けられるわけではありません。
令和8年度診療報酬改定のポイントと対象職種
今回の改定では、診療報酬本体がプラス3.09%となり、その中に医療機関で働くスタッフの賃上げ原資として「ベースアップ評価料(Ⅰ)」「ベースアップ評価料(Ⅱ)」が組み込まれています。
これは病院が施設基準を満たして届け出ることで初めて算定できる仕組みであり、算定した診療報酬がそのまま「原資」として医療機関に入り、そこから各職種への配分が行われる、という流れです。
放射線技師をはじめとするコメディカル職も対象に含まれていますが、看護職員などと比べると配分の優先順位や金額の決め方は病院ごとの裁量に委ねられている部分が大きいのが実情です。
制度上「対象」であることと、「実際に十分な恩恵を受けられるか」は、必ずしもイコールではありません。
あなたの給与明細にはどう反映される?
ベースアップ評価料による原資は、病院の経営判断・労務担当者の裁量によって、基本給への組み入れ、手当としての支給、賞与への上乗せなど、配分方法が病院ごとに大きく異なります。同じ「賃上げ」というニュースでも、勤務先によって手取りへの反映のされ方はさまざまです。
実際、私自身の給与明細を確認しても、「その他の費用」という項目で手当が新しく付くようになりました。ただ、正直なところ、今の物価高騰のスピードに対応できるほどの収入アップとは言えず、インパクトに欠けるというのが率直な実感です。
周囲のスタッフにも聞いてみましたが、「生活が目に見えて楽になるほどの収入アップにはなっていない」という声が大半でした。
さらに言えば、今回の2026年改定から事務職員も正式にベースアップ評価料の対象へ加わりました。しかし、最終的な配分額やルールは病院の裁量に大きく委ねられているため、現場のコメディカルや事務職員の隅々まで十分に行き渡らず、結果として恩恵を実感できない人が多いのが現実です。
「賃上げ」という言葉だけを見て安心するのではなく、自分の給与明細で実際に何が変わったのかを一度確認しておくとよいでしょう。
額面が上がっても「手取りの増加幅が鈍る」社会保険料と税金の仕組み
ベースアップや当直で額面が上がっても、4〜6月の支払額で決まる「標準報酬月額」の等級が上がれば社会保険料が増加します。
また、日本の所得税は「超過累進課税」のため、給与が増えれば増えた分に対してより高い税率が適用されます。手取りが減るわけではありませんが、額面アップ分の約2〜3割が引かれるため恩恵を実感しにくい構造です。
標準報酬月額の等級アップによる「見えない負担増」
社会保険料(健康保険・厚生年金)は、4月・5月・6月の3ヶ月間の報酬の平均額をもとに決まる「標準報酬月額」という等級によって計算されます。ベースアップや当直手当の増加でこの期間の報酬が上がり、等級が1つでも上がると、そこから1年間、給与から天引きされる社会保険料も自動的に増えることになります。
例えば、標準報酬月額が1等級上がるだけでも、健康保険料と厚生年金保険料を合わせた本人負担額は月あたり数千円単位で増加することがあります。
年収ベースで見れば、ベースアップで増えた額面の一部が、社会保険料の増加分として先に差し引かれる計算になるわけです。これは「取られすぎ」というより、報酬に応じた社会保障の仕組みではあるのですが、体感としては「思ったより残らない」という感覚につながりやすい部分です。
「超過累進課税」の壁!当直や夜勤を頑張っても恩恵が薄まる理由
ここで正確に押さえておきたいのが、日本の所得税は「超過累進課税」という方式を採用している、という点です。これは、給与が増えたからといって、これまでの所得も含めて全体に高い税率がかかるわけではなく、「一定額を超えた部分にだけ」段階的に高い税率が適用される仕組みです。
したがって、「給与が上がったことで税金が増え、その結果手取りが以前より減ってしまう(逆転現象)」ということは、制度上は起こりません。手取りが減ることはなく、あくまで「増えた分」に対する税率が段階的に上がっていくため、額面の増加率に対して手取りの増加率が鈍く感じられる、というのが正確な理解です。
放射線技師の平均年収は概ね544万円前後とされていますが(ちなみに私はもっと低いです)、このゾーンは所得税率が上がりやすい境界に差し掛かる方も多く、「当直や夜勤を頑張って額面を増やしても、思ったほど手取りに反映されない」と感じやすい構造的な理由がここにあります。
実際、私自身もこれまで、ある程度まで総所得が増えると税金も比例して増え、体感としては手取りがほとんど変わらない、ということを何度も経験してきました。
特に今回は、住宅ローン控除が終了するタイミングとベースアップの時期が重なってしまい、控除がなくなったことで増えた税金分で、ベースアップによる増額分がほぼ相殺されてしまいました。結果として、額面は上がったはずなのに、実際の手取り額はほとんど変わっていない、というのが正直な現状です。
病院の給料に頼らない!医療従事者の「手取り最大化」3つのアクション
手取りを最大化するには、①自身の健康保険証が「組合健保」か確認し付加給付を前提に民間保険を削る、②医療知識やYMAA認証を活かしたWebライター等の副業で「事業所得」を作る、③青色申告特別控除(最大65万円)で節税する、という3ステップが取り組みやすく再現性の高い方法です。
まずは自分の保険証を確認!「付加給付」で固定費を削る
意外と見落とされがちですが、大手病院グループや一部の医療機関の「組合健保(組合管掌健康保険)」に加入している場合、法定の高額療養費制度に上乗せする形で「付加給付」という独自の給付制度が用意されていることがあります。
これは、1ヶ月あたりの自己負担額に病院独自の上限(多くの場合2〜3万円程度)を設定するもので、これがあれば民間の医療保険で手厚くカバーする必要性は下がります。
まずは自分の保険証の種類を確認し、加入している健保組合に付加給付があるかを調べてみてください。
もし過剰な医療保険に加入していた場合、その見直しだけで毎月の固定費(保険料)を数千円単位で削減できる可能性があります(高額療養費制度と医療保険の考え方については、過去記事「高額療養費制度があるから医療保険はいらない?」でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください)。
医療知識×YMAA認証で「事業所得」の柱を作る
税金や社会保険料の仕組み上、給与所得だけをどれだけ増やしても、増えた分の一部は自動的に天引きされていきます。だからこそ意識したいのが、病院からの給与所得以外に、自分の裁量で動かせる「事業所得」の柱を作ることです。
医療従事者としての専門知識、そしてYMAA認証(薬機法・医療広告ガイドラインの知識)があれば、医療系メディアでのWebライターなど、専門性を活かした副業も選択肢になります。
正直なところ、これまで私は病院からの給与や毎年の基本給アップにどこかで期待をしていました。しかし、病院自体も診療報酬という決まった枠の中で経営をしているため、「無い袖は振れない」というのが現実です。
だからこそ、自分の裁量で動かせる副業によって自力で稼ぐことが、結果的に手取りを増やす近道になると感じています。医療従事者であれば単発のアルバイトなども豊富にあるので、休日をアルバイトに充てるだけでも、収入はある程度底上げできます。
青色申告(最大65万円控除)で効率よく手取りを残す
副業で事業所得(または雑所得)が発生したら、活用を検討したいのが「青色申告」です。給与所得は経費という概念がほとんど使えませんが、事業所得であれば、パソコンや取材にかかった交通費、通信費など、業務に関連する支出を経費として計上できます。
さらに、複式簿記による記帳などの要件を満たして青色申告を行えば、最大65万円の「青色申告特別控除」を所得から差し引くことができます。これは、給与所得だけに頼っている状態では得られない節税効果です。
「稼いだ分がそのまま税金で持っていかれる」という感覚を減らし、効率よく手取りを残すためには、事業所得づくりと青色申告はセットで考えておくとよいでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q1: 2026年の給付金や賃上げはパートや非常勤にも適用されますか?
A1: 制度上は対象となり得ますが、最終的な配分は各医療機関の判断に委ねられます。だからこそ、個人での固定費削減や副業準備が不可欠です。
Q2: 副業を始めたいですが、病院にバレないか心配です。
A2: 確定申告時に住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」に選択することで、給与天引き額の変動による発覚リスクを抑えることが可能です。とはいえ、副業の種類によってはバレるリスクもあるため、ご自身の勤務先の就業規則を確認し、許可制になっていれば許可を取ってから副業に挑むほうがより安全でしょう。
まとめ
- 2026年のベースアップがあっても、税金(超過累進課税)と社会保険料の壁で手取りの増加幅は鈍くなる
- まずは組合健保の「付加給付」を活用し、無駄な医療保険などの固定費を削ることが最優先
- 本格的に手取りを増やすなら、医療知識を活かした副業(事業所得)と青色申告が有効な組み合わせ
「自分の加入している健保にはどんな付加給付がある?」「今の保険、本当に自分に必要なのか見直して固定費を削りたい」という方は、お気軽にご相談ください。FP2級の知識と医療現場のリアルを踏まえ、あなたの状況に合わせたプランを一緒に考えます。
👉 [ お問い合わせ・家計相談はこちらから ]
👉 [ ココナラからのご相談・サービス詳細は以下から]
新NISAや住宅ローンの悩みにFPがお答えします 【先着5名】FP2級がテキストで回答!住宅ローン&新NISA


コメント